とらますく先生と対談!
ひとまず休止していた「直撃!スタディチューバー」でしたが、この度早くも復活します!というのもMANAVIE(マナビー)という無料学習動画キュレーションサイトを運営されているとらますく先生より「教育系動画のプラットフォームを運営する者同士、一度お話しませんか?」という打診を頂き、急遽、対談することになりました。
せっかく対談するならコンテンツとして残しておこうと思い、直撃!スタディチューバー第六回として公開いたします。
というわけで、とらますく先生、本日はよろしくお願いします!
とらますく先生
よろしくお願いします。
本業医師のYouTuber
マナビーについては後ほど伺うとして、まずはとらますく先生個人の活動についてお聞きしたいと思います。
はいどうぞ。
とらますく先生はお医者さんをされているんですよね?
そうですね。
とらますく先生のチャンネルは既に1400本を超える授業動画がアップされていますが、お医者さんでありながらそれだけの量をこなすって凄いですね。
今はずっと病棟勤務ではなく研究者としての業務もあって、研究の方は多少、時間の融通がきくんです。まあでも忙しいですけどね。笑
ホント忙しいだろうなと思います。YouTubeに教育系動画を上げるようになったきっかけは何だったのですか?
元々、医師という仕事柄、僕は以前から死生観みたいなものを凄い意識していて、自分が死ぬ時に「価値のあることをやった人生だった」と思って死にたいなというのがあるんですよね。
自分の死を意識しながら生きている人って、前向きでエネルギッシュですよね。
自分が社会に提供できる価値と言えば、まず医師としての仕事がその一つなので、医療・ヘルスケアの領域で精一杯やっていこうっていうのがありますよね。
患者さんの役に立とうと。
あと他に何かあるかなって考えた時に、僕は生粋の受験戦士だったので受験勉強のノウハウみたいなものは責任を持って提案できる自信がありました。そういった知識をYouTubeで発信していけば、価値を提供できるんじゃないかなってのが始まりでしたね。
なるほど。生きた証じゃないけど、YouTubeなら財産として残りますしね。実際始めたのはいつ頃だったのですか?
はいち先生とかやる気先生(中村先生)とかの少し後ぐらいだったと思います。
へぇ、教育系コンテンツ発信者としてはかなり初期ですね。
ただ、以前は自分自身のチャンネルは持っていなくて、二年前ぐらいに作り直したばかりなので、登録者数は断然少ないです。私が登録者数を伸ばすことに熱心でないというのもありますけど。
そうだったんですね。やっぱり講義は生物学をメインでされているんですか?
そうですね。医師としては生物が一番の専門と言えますので生物学の講義動画は多いですね。あと英語もやってるんですよ。
あ、SOELっていう教材?かなにかをご紹介されてるんですよね。
SOELは僕が作った英語学習メソッドみたいなもので、中学から大学入試レベルまで効率よく学べるように一冊の本にまとめたものなんです。
へー!ご自分で作られたんですね!中学から大学入試までを一冊の本に放り込んだんですか?!
そうです。できるだけ無駄を省きながらも、必要なものは漏れなく網羅されています。
中高の6年間分が一冊にまとまってるってとんでもない教材ですね。
かなり工夫しましたね。受験に必要な文法、構文、単語、熟語は全てこの一冊でインプットできるはずです。
正直、それだけ内容が濃いと読むのが難しそうですね。
確かに最終到達レベルは高いですが、内容は「This is a pen.」からのスタートなので、原理的には誰でもついて来られるはずです。それに各単元の詳しい説明は動画で行っていますので、併用すれば安定して学習を進めることができます。
あ!本と動画が連動してるわけですね?それは教育YouTuberとしては素晴らしいアイデアですね。
ぜひ動画と本をセットで利用してもらいたいですね。僕の講義を見て医学部に入ったっていう人も結構いるので、英語・生物ともに教材と動画のセットは自信を持っておすすめできます。
SOELはAmazonでも絶賛販売中なので英語を効率よく勉強したい人は要チェックです!
SOEL ―Sentence-oriented English Learning
マナビーとスタディチューブ
とらますく先生は自分で講義動画を上げるだけではなく、MANAVIE(マナビー)という教育動画関連のwebサービスを運営されているんですよね。マナビーとはどういったサイトなのですか?
一言で言えば、教育系動画コンテンツのキュレーションサイトですね。
※キュレーション・・コンテンツを収集・選別し整理することで新しい価値を持たせること
各教科ごとの授業動画を並べて見せることで、利用しやすくするみたいな?
そうですね。理想としては各学年、各教科ごとに連続講義の形で漏れることなく学習動画を網羅したいと思っています。もちろん一人で全部の動画を用意することはできないので、そういった質の高い講義動画を上げてらっしゃる先生にお願いして、動画URLを埋め込み共有させてもらっている形です。
なるほど。マナビーはまず学ぶべきカリキュラムありきで、それをYouTube動画で網羅しようっていうスタイルですね。
そうですね。「教科書の内容を系統的・網羅的に学べるコンテンツが揃っている」ということを一番重視していて、それを無料で提供したいというのが大きな目的ですね。
僕がスタディチューブを作ったのはヨビノリたくみさんや貫太郎先生などの動画を見て、単純にこれは面白い!めちゃくちゃ価値がある!と思って、そういった勉強になる動画コンテンツを一箇所にまとめる場所があればいいなと思ったのがキッカケでした。
バラバラで存在するのではなく、一緒に集まることで足し算以上の価値が生まれるはずなんですよね。
そうですよね。それと、これからも新しい教育YouTuberが出てくると思うのですが、そういった方たちが露出できる場を作りたいという思いもありました。YouTube上では大手のYouTuberさんに埋もれて新人さんにはなかなか陽が当たらないでしょうから。それで注目の新人ランキングみたいな仕組みも作ったんです。
そういう視点も必要ですね。新規参入を促せば結果的に全体が盛り上がると思います。
あと重要視したのは検索性ですね。フリーワード検索で目的の動画にピンポイントで辿り着けたり、その分野に強いチャンネルを探せたり。
スタディチューブを拝見して、その辺のインターフェイスは本当よく出来てるなと感じました。
ありがとうございます。
そういった理念とか機能性がマナビーとスタディチューブでは相互補完的だと感じたんですよ。
確かに指向性が違うように感じますね。スタディチューブは検索性重視で、全ての教育系チャンネルを網羅して見せたいというのに対して、マナビーでは全ての学習内容をYouTube動画で網羅したいという感じですね。チャンネルを網羅するのか、学習内容を網羅するのかの違いですね。
おっしゃる通りですね。その両方が必要だし、両方あってこそ動画教育のプラットフォームとして完成するのではないかなと。なのでお互い協力し合えるところは協力して今後、連携しながらやっていきたいなと思っています。
ありがとうございます。確かにこの界隈のYouTuberさんたちは凄い価値のあることをされている割には収益が少ないようなので(笑)、もっとYouTubeを勉強に利用する人が増えるように是非、協力してやっていきましょう!
教育動画プラットフォームの課題
ただ現状では正直アクセスも少ないですし、まだまだプラットフォームとして認知されていないなと感じます。
やっぱりプラットフォームというからには、そこに来たら日本の教育動画コンテンツの主要なものにはアクセスできるっていうのが理想だと思うんですが、それが現状では残念ながら実現できていないんですよね。
そうですね。お陰様でスタディチューブには現在40のチャンネルをご登録いただいてますが、残念ながらまだ全部は網羅できていません。
マナビーの場合は、教材としてキュレーションさせてもらう形なので、基本的にYouTuberさんに同意をもらった上で掲載しているのですが、スタディチューブの場合はあくまで紹介・検索サイトという体なのですから、とりあえず全部載せてしまうってことは考えなかったんですか?
まあやろうと思えば本人の許可がなくてもAPIでデータを取ってきて載せることは可能なのですが、やっぱり人様が一生懸命作ったものを勝手にデータをぶっこ抜いて自分のサイトに載せるのはさすがに失礼だと思ったので登録制という形にしました。
まあ確かに勝手に全部使われるのは良い気がしないというのも分かります。本人が了承した上で登録してもらえたらベストですね。
ただ大手のチャンネルに対しては、登録するメリットをこちら側が提供できていないというのが現状なんですよね。大手さんは既に多くの方に認知されていますしファンも付いてますから、残念ながら駆け出しのプラットフォームに登録しても何の旨味もないです。
大きなチャンネルであればあるほどそうかも知れませんね。
そうなんですよ。むしろその価値あるコンテンツを分けてもらう形になるし、その影響力にこちらがタダ乗りする形になってしまうので、あまり無理強いはできないなというのは正直あります。
まあでもスタディチューブの場合、登録するのは本当にボタン一つで簡単なので、理念に共感して頂けて、一緒に学習動画プラットフォームを育てようと思って頂ける方は是非登録してもらいたいですね。
現にそういう想いで登録してくれている方もいると思います。というか初期に登録してくれた方は100%そうだと思います。
あとは結局プラットフォーム側が成長するしかないのかなって。「勉強の動画だったらスタディチューブで探したら見つかるよ」って多くの方に言ってもらえるぐらいになれば、登録する側にもメリットがありますし。
そうですね。登録するインセンティブが必要ですね。
プラットフォームって所詮ただの箱じゃないですか。言わばスタディチューブは、チャンネルを丸ごと放り込んだら勝手に整理されて取り出しやすくなる箱みたいなもんですよね。そこにたくさんの動画コンテンツを入れてもらえて初めて価値があるというか、箱自体には何の価値もないんですよ。
まあ確かに中身が揃ってこそですね。
けど、おかげさまでヨビノリたくみさんや貫太郎先生という登録者数5万人クラスの人気チャンネルにもご登録いただきましたし、中村先生やムンディ先生、とらますく先生のような動画数の充実した老舗チャンネルもご登録いただきました。Aiciaさんのような新進気鋭のVTuberの方々にも登録いただいています。他にももちろん素晴らしいコンテンツをお持ちのチャンネルにご登録いただいています。あと視聴者はまだ多くなくても凄い勢いで動画をアップされてる新しい方もいらっしゃいます。
そういう意味ではスタディチューブはかなり価値あるものになってきていると思うんです。皆さんのおかげで。
あとはどれだけ多くの方に認知され、実際使ってもらえるかという部分ですね。
そうなんですよ。中身は充実してきたので、後はそれを取り出す人がもっと増えてほしいです。ユーザーが増えれば登録する側にも旨味が出てくるので、さらに中身が充実するっていう良いスパイラルになると思うんです。
そうですね。もっとユーザーが増えるようにプロモーション活動も含めてこれからどんどんやっていきたいですね。
ただ残念なお知らせですが、正直こちらは赤字垂れ流し状態なので、あんまりお金はかけられません。笑
マナビーとスタディチューブをセットで売り込んでいけるようにメディア戦略を練りたいと思います。
あざっす!よろしくお願いします!
無料でリーチできる学習環境
大手企業が運営している動画学習サービスって今じゃいろいろあるんですけど、全部有料なんですよ。やっぱり無料で提供するっていうのに価値があると僕は思うんですよね。
そうですね。
経済行動原理的には、0円と1円には大きな隔たりがあって、1円も1000円も正直あまり変わらないんです。
金額以前に「有料」であるというだけで、学習環境にリーチする機会を失っている子供たちって非常にたくさん居るんですよ。
なるほど。
そういう子たちの中にも潜在的に優秀な子は絶対いるだろうし、学びたいだけ学べる環境を用意するべきだと思うんですよね。誰もが無料で利用できる高度で体系的な学習環境をネット上に作ることは、技術的には可能なはずなんです。
そうですね。YouTubeならマネタイズも可能ですし。
たまたま通っている学校とか、親に入れてもらった塾のやり方しか知る機会がないって、かなり損なことですよね。学ぼうと思えば誰でもリーチできる完成度の高いWeb上の学習環境を提供するっていうのは、日本の将来、人材を育てるという意味ですごい必要なことだと思うんです。
話が大きくなってきましたね。
でも教育ってそれぐらいのつもりでやらないと簡単にマネタイズできないから、なかなか完遂できないんですよ。これやったら儲かるかな?みたいな気持ちでやっても絶対続かないですからね。
そうですね。それはYouTuberさんたちにも言えることだし、僕らのようなプラットフォームも同じですね。とにかく良いものを提供したいというのが根っこに無いと無理ですね。
いろんな科目を専門とする教育YouTuberさんがいるので、彼らがまとまればアメリカのカーン・アカデミーに比肩する学習環境が作れるんじゃないかなって。
カーン・アカデミー?
カーン・アカデミーというのは、海外では有名なんですが、かなりコンテンツが充実したweb上の無料学習サイトです。元々、カーンさんっていう方が個人で授業動画をアップしたことから始まったのですが、ビル・ゲイツとかが巨額の寄付をしたりして、どんどん発展してきています。
へぇ、さすが世界屈指の大富豪はすることが違いますね。お金があれば人材も集まるし良いものが作れますよね。
日本には寄付文化が乏しいので、そういう形はあまり期待できないですね。企業が独占して収益化を目指すっていうパターンか、NPOとして細々とやるっていうパターンしかないんですよね。
※NPO・・非営利組織
う〜ん、日本の教育業界は保守的ですしねぇ。
その代わり、ある意味日本らしいなと思うのですが、職人的な力のある教育YouTuberが個別に育ってきているんですね。
ホントですよね。真面目な先生からファボゼロの先生までバリエーション豊かなのがまた良いですよね。
そうですね。でも職人さんがそれぞれ自分の分野でバラバラにやってるだけじゃダメだと思うんです。
なるほど。ボトムアップ型の日本版カーン・アカデミーが必要だと。
カーン・アカデミーは全世界を対象としていますし、恐ろしいことに全部日本語吹き替えもされてきているんですよ。
え?そうなんですか?
だからうかうかしてたら、全部またアメリカ様に持っていかれちゃうよっていう危機感はありますよね。
日本の教育YouTuberは黒船と戦う幕末の志士みたいだ。
せっかく日本オリジナルな教育YouTuberという土壌が出来つつあるので、なんとか一つの形にしたいですよね。
そうですね。スタディチューブやマナビーという便利な場所があるということを多くの方、特に10代の学生さんに広く知ってもらいたいです。
こういうプラットフォームって絶対必用なものだと思います。日本の将来の為にという志を持って運営していかなくちゃダメなんです。
ただ、サーバー代ぐらいは売上げが立ってほしいというのが本音です。笑
確かにね。笑 少なくとも赤字にならない程度にはマネタイズも考えないと、それこそ続けられないですからね。
まあ、僕らは踏み台にして頂くとして、多くの教育YouTuberさんがそれだけで生計を立てられるぐらいのマーケットにしていけたら最高ですね。
マナビーとスタディチューブが大連合でやっていけば、きっと大きなマーケットプレイスを作れるはずです。
そうですね。ユーザーにとって便利な箱が作れるように二人三脚で一歩ずつ活動していきましょう。というか教育YouTuberの皆さん、これからも箱の中に良いコンテンツを入れていって下さいっ!
では、とらますく先生、本日はお忙しい中、ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。有意義なお話ができて良かったです。
ではまた次回!
ありがとうございました
本業が医師という異色の教育YouTuberとらますく先生。虎のマスクで正体を隠しながら慈善的な教育活動を行うその姿はまさにタイガーマスクさながらです。誰もが利用できる高度な学習環境を構築するというミッションを成し遂げられるように頑張っていきましょう。スタディチューブも微力ながら協力させていただきます!