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【高校地理】3-5. 世界の多雨・少雨地域 | 3. 世界の気候

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再生: 62,733回

公開日: 2020年11月08日

【お詫びと訂正】2:35付近で「偏西風がアルプス山脈にぶつかるチリ南部や…」と言っていますが、正しくは「アンデス山脈」の間違いです。多くの皆様からいただいたコメントを消さないためにも動画は残しておきますが、ご注意ください。

今回の動画の目次&確認問題は以下のとおりです。

【目次】
0:00 イントロダクション
0:30 雨の降る仕組み ~世界の多雨地域~
1:06 地形性降雨
2:57 収束性降雨(低気圧性降雨)
3:50 対流性降雨
4:16 前線性降雨
6:03 雨の降らない仕組み ~世界の少雨地域~
6:44 回帰線砂漠
7:21 内陸砂漠
7:45 海岸砂漠
8:22 雨陰砂漠

【確認問題】
https://forms.gle/duYJAHydJzDRFHhM7

#高校地理
#地理B
#気候

高校地理の授業動画、「世界の気候」第5回は「世界の多雨・少雨地域」です。

「世界で雨の多い場所、少ない場所は、どんなしくみでそうなってるの?」
ということで、
今回の動画では、これまで大気大循環や季節風、海流などでバラバラに触れてきた
「雨の降るしくみ・降らないしくみ」を整理していきたいと思います。

動画は大きく2つのパートに分かれます。

前半と後半、雨の降るしくみと降らないしくみのそれぞれで、
メカニズムを4つずつ、具体例とともに解説していきます。

1.雨の降るしくみ

先ずは、雨の降るしくみからです。
雨が降るために絶対に必要なものは、「雲」です。
そして、雲ができるためには、
水蒸気を含んだ空気が上空へと運ばれること、
つまり上昇気流が必要です。

そのため、
どういう場所で雨が降るのか、は、
どういう場所で上昇気流が生じるのか、
とほぼ同じと考えることができます。

上昇気流の生じるしくみによって、雨の降り方は、大きく4つ、
地形性降雨、収束性(低気圧性)降雨、対流性降雨、前線性降雨と分類されます。
一つずつ見ていきましょう。

1. 地形性降雨
先ずは、地形性降雨です。

地形性、というのは、山の斜面に風がぶつかることで
上昇気流が生じて雨が降る、というタイプです。

地形性降雨の具体例としては、
季節風の動画でも登場した
インド北東部のアッサム地方や、インド南西部などがあります。
ここでは、夏になると海からの湿った季節風が吹き込んできて、
その風がヒマラヤ山脈や西ガーツ山脈にぶつかることで
たくさんの雨が降ります。

別の具体例としては、
イギリスのグレートブリテン島西部も挙げられます。
グレートブリテン島には中央に
ペニン山脈がという山脈が走っているのですが、ここに、
温かい北大西洋海流の上をとおって
水蒸気をたっぷり含んだ偏西風がぶつかって上昇気流が生まれます。
すると、風上にあたる西側のランカシャー地方は
雨の多い湿潤な気候となります。

産業革命の時代、イギリスはインドから輸入した綿花を原料にした
綿工業で栄えたのですが、綿花から作る糸、
綿糸は空気が湿っていないと切れてしまいやすい、
という性質があったため、湿潤な気候のこのランカシャー地方が
産業革命の中心となりました。

逆に、風下にあたる東側のヨークシャー地方は、
雨の少ない乾燥した気候となります。
このためヨークシャー地方では、乾燥に強い羊の飼育が盛んです。

この他にも、
偏西風がアルプス山脈にぶつかるチリ南部や、
貿易風がぶつかるマダガスカル島の南東部、
さらには、冬の季節風がぶつかって豪雪地帯となる新潟県や山形県の山沿いなど、
地形性降雨はさまざまな場所で見られますので、
ある地域の降水量が目立って多かった場合、
そこに吹いてくる風や、その風がぶつかる山脈はないか、
と考えるようにしてみましょう。

2. 収束性(低気圧性)降雨

2つ目は、収束性降雨、もしくは低気圧性降雨とも呼ばれるタイプです。

大気大循環の話を思い出してもらいたいのですが、
赤道付近というのは、太陽の光が強く当たるため、
常に上昇気流が卓越しており、低気圧帯となっていました。
そしてこの低気圧帯には、中緯度高圧帯からの風が吹き込んでくる、
収束してくるのでした。
このように、空気が吹き込んでくる低気圧帯で上昇気流が起こり、
たくさんの雨が降るパターンが、収束性降雨、
あるいは低気圧性降雨と呼ばれます。

具体例としては、赤道付近の熱帯収束帯(赤道低圧帯)に位置する国々です。
アマゾンの熱帯雨林が広がる南米大陸北部や、アフリカ大陸の中央部、
東南アジアのインドネシアやシンガポールなどで雨が多いのは、
この収束性降雨によるものです。

また、台風は強い低気圧でしたので、
台風によってもたらされる雨も、この収束性降雨に含まれます。

3. 対流性降雨

3つ目は、対流性降雨です。

地面が太陽で暖められることで上昇気流が生じ、
激しい雨が降るというパターンです。

収束性降雨と似ているのですが、
対流性降雨はもっと短時間で起こる現象ですし、赤道付近以外でも見られます。
日本で夏の夕方にみられる「夕立ち」や、
熱帯地方で短時間にざっと激しい雨の降る「スコール」が、
対流性降雨の具体例です。

4. 前線性降雨

最後は、前線性降雨です。

冷たい空気と暖かい空気がぶつかる場所では、
冷たい空気が下に潜り込んで、
もしくは暖かい空気が冷たい空気の上に乗り上げることで、
上昇気流が生じて、雨が降ります。

冷たい空気の塊を寒気、暖かい空気の塊を暖気と言いますが、
寒気と暖気がぶつかる場所が前線と呼ばれ、
この前線で生じる雨のため、前線性降雨と言います。

前線性降雨の具体例は、
日本に6月頃に停滞する梅雨前線による降雨が挙げられます。

また、緯度60度くらいでみられる降水も、前線性降雨です。
このあたりは、亜寒帯低圧帯と呼ばれるエリアでしたが、
中緯度高圧帯からやってくる温暖な風、つまり偏西風と、
極高圧帯からやってくる冷たい風、つまり極偏東風が
ぶつかる場所でもありました。

南からやってきた暖かい偏西風は、
北からやってきた冷たい極偏東風の上に乗るようにして
上昇気流を生み出します。
こうして、亜寒帯低圧帯は、
寒帯前線と呼ばれる前線がいくつも発達することで、
降水量の多い地域となります。

こちらの図は、地球の緯度別の降水量を示したものですが、
赤道付近は熱帯収束帯の影響で雨が多く、
回帰線から緯度30度付近では、
中緯度高圧帯の影響により降水量が減るものの、
緯度60度付近で再び降水量が多くなります。
これが主に、寒帯前線の前線性降雨によるものです。

以上、雨の降るしくみの4分類でした。

なお、現実の世界では、
「この雨は◯型降雨!」とはっきり分類できる雨ばかりでなく、
この4つのしくみが複数組み合わさって降るパターンも多いので、
誤解しないでください。

2.雨の降らないしくみ

続いては、世界の少雨地域、雨の降らないしくみです。

降水量がすごく少ない場所のことを砂漠と言いますので、
雨の降らないしくみというのは、
砂漠ができるしくみと言い換えることもできます。

そして、砂漠のできるしくみというのは、
回帰線砂漠、内陸砂漠、海岸砂漠、雨陰砂漠と4つに分類されます。

なお、砂漠というと鳥取砂丘のように
砂が広がっている場所をイメージするかもしれませんが、
地理学で「砂漠」とは、降水量がすごく少ない場所を意味しますので、
砂が広がっている場所とは限らないことに注意してください。
鳥取砂丘は雨がたくさん降りますので、砂漠ではありません。

1. 回帰線砂漠
さて話を戻して、先ずは、回帰線砂漠です。
大気大循環で学習した、亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響が大きく、
一年中下降気流が卓越する地域で形成される砂漠です。
北回帰線、南回帰線の付近で形成されるため、回帰線砂漠と言います。

回帰線砂漠の具体例としては、
アフリカ大陸北部のサハラ砂漠、
アフリカ大陸南部のカラハリ砂漠、
アラビア半島のルブアルハリ砂漠、
オーストラリアのグレートサンディー砂漠、などが該当します。
どの砂漠も、ほぼ回帰線と同じ緯度にあることが確認できます。

2. 内陸砂漠

2つ目は、内陸砂漠。
海から遠くて、水蒸気の共有が非常に少ない地域、
つまり、隔海度の非常に大きな地域にできる砂漠のことを内陸砂漠と言います。

内陸砂漠の具体例としては、
中国とモンゴルの国境付近に広がるゴビ砂漠や、
中国西部のタクラマカン砂漠、などが挙げられます。
いずれも、海からとても離れている場所に位置する砂漠です。
3. 海岸砂漠

3つ目は海岸砂漠。

これは一つ前の動画「海流と気候」で詳しく説明していますが、
近くを寒流が流れている場所では、
海から運ばれてきた冷たい空気によって大気が安定して動かなくなってしまい、
上昇気流が発生しないために乾燥地域となります。
このようなタイプを海岸砂漠と言います。

海岸砂漠の代表例としては3つ。
ベンゲラ海流によって形成される、ナミブ砂漠。
ペルー海流(フンボルト海流)によって形成される、アタカマ砂漠。
そして、カリフォルニア海流によって形成される、カリフォルニア半島です。

4. 雨陰砂漠

最後は、雨陰砂漠です。

地形性降雨の裏側で形成される砂漠とも言えるのですが、
卓越風が山地にぶつかって風上側で雨を降らせた後、
乾燥した風下側にできる砂漠を雨陰砂漠と言います。
局地風の動画で解説した「フェーン現象」の風下側での様子とも言えます。

雨陰砂漠の代表例としては、アルゼンチン南部のパタゴニア地方です。
ここでは、偏西風がアンデス山脈にぶつかって風上側に雨をもたらした後、
乾いた風が吹き込んでくることで形成される乾燥地域です。
パタゴニアでは、乾燥した気候にも耐えられる家畜として、
主に羊が飼育されています。

はい、今回の動画は以上となります。
確認問題にチャレンジしたい方はURLはコメント欄からアクセスしてください。
また、乾燥や質問などあれば、コメント欄にお気軽にお書きください。

それではまた次回!

説明文の続きを見る

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東大物理学科卒、日本物理オリンピック金賞など輝かしい実績を持つガチ中ガチ、林先生です。取り扱う問題は難しいですが解説は丁寧かつ論理的で分かり易いので受験生におすすめ!

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