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【高校地理】5-1. 農業の成立条件と起源 | 5. 世界の農林水産業

高評価: 394件

再生: 16,432回

公開日: 2023年8月12日

高校地理の授業動画、今回から新しい単元「世界の農林水産業」に入ります。第1回は「農業の成立条件と起源」です。

【目次】
0:00 イントロダクション
0:30 農業の自然条件と社会条件
1:24 各農産物に適した気候
2:24 各農産物の主な栽培地域
5:01 農業の社会条件
8:17 農作物の起源

【確認問題のURL】
https://forms.gle/od3nCyd44h1L6r8HA

【今回の動画の内容を文章と画像で確認されたい方はこちら】
https://www.geography-lesson.com/condiitons-for-agriculture/

【参考文献】

・『人間の営みがわかる地理学入門』https://amzn.to/3QCfV8G
特に農業分野について詳しく解説されている入試レベル+αの本です。本動画の気候と農作物の栽培条件の図は、この本をもとに作成しました。

・『栽培植物に起源と伝播』https://amzn.to/3QGZoAx
農産物の起源について解説した本で、教科書や資料集の地図はこの本が元になって作成されています。

・『瀬川聡の 大学入学共通テスト 地理B[系統地理編]超重要問題の解き方』https://amzn.to/47x1Qj4
共通テスト対策として問題演習を重ねたいならこちらが定番です。「これはおさえておきたい!」という問題ばかりが紹介されています。

・『リアルな今がわかる 日本と世界の地理 (だからわかるシリーズ)』砂崎 良(2020) https://amzn.to/3giMeGS
高校地理の参考書の一つですが、写真がとにかくたくさん載っていて、パラパラと眺めているだけでも楽しい一冊です。

・『村瀬のゼロからわかる地理B 系統地理編』 https://amzn.to/3sV5CRi
基礎からかみ砕いて丁寧に説明されており、図表も分かりやすいです。この動画を作るときにも参考にしています。やや分厚いので、困った時に調べるために使うと良いと思います。

・『目からウロコの なるほど地理講義 系統地理編』https://amzn.to/3FVeZE8
上記の本と並んで、非常に詳しく網羅的な解説がされている参考書です。上よりもやや専門的な解説も含まれているので、地理をさらに得意にしたい人におすすめです。

#高校地理 #農業 #共通テスト #地理B #地理探究

さて、農業と一口に言っても、色んなタイプの農業があります。国によって、場所によって、作っているものも農業のやり方も全然違います。では一体、何がその違いを生み出しているのか。これをみていくのが、前半の「農業の成立条件」です。

そして後半では、農作物の起源について解説します。

先ずは農業の成立条件。

ある場所で、どんな農作物を、どんな方法で作るかは、自然条件と社会条件の両方が組み合わさって決まります。

自然条件というのは、気温や降水量などの自然環境に関するもので、社会条件というのは自然環境以外の条件のことです。

この中で先ず重要になってくるのは自然条件、特に気温と降水量です。

農業は植物を相手にするので、育てたいものによって、ちょうどいい温度や水の量が違うんですね。

そのため、土壌や地形が影響する場合もありますが、何を栽培するか決めるベースになるのは、やはりその場所の気温と降水量、つまり気候です。

では、どんな気候がどの農作物に向いているのか、具体的にみていきましょう。

こちらの図、縦軸に気温、横軸に降水量を表しています。ここに農作物の名前を入れていきます。

先ずは世界の主食であるコメと小麦です。
コメの方が右上にあるので、よりたくさんの雨が降って、気温が高い場所が栽培に適している、という意味です。具体的には年降水量1000mmというのが、コメに必要な降水量として覚えておきたい数字です。

一方で小麦は、コメより必要な水が少なくて、涼しい場所が栽培に向いています。具体的には、年降水量500mmで栽培可能です。東京の年降水量は約1,500mmなので、その三分の一の降水量でも小麦は栽培可能ということです。ただし暑さには弱いので、日本を含む多くの国では、小麦は秋に種を蒔いて、冬を超えて、夏前に収穫するというスケジュールになります。

あくまでイメージですが、コメは、夏の日差しと水が大好きな小学生男子みたいな作物で、小麦は、暑いのもたくさんの雨も苦手なので、何でしょうね、冬にじっくり勉強する受験生みたいな作物でしょうか。

こうした性質が分かると、栽培が盛んな場所も見えてきます。

例えば、コメに向いている、夏の高温多雨、という気候。夏に海からの湿った季節風が吹き込んでくるモンスーンアジアという地域がピッタリなんですね。インドから東南アジア、日本まで含む地域ですが、世界のコメの9割以上はここで作られています。

一方ヨーロッパの方では、コメを作ろうと思っても、地中海の周りはCs気候なので夏の降水量が少な過ぎます。もうちょっと緯度の高いところだと、今度は夏の気温が低すぎます。そのため、ヨーロッパでは、コメより涼しくて乾燥した気候を好む小麦の栽培が中心になります。

さらに、小麦よりもっと寒さに強い作物としては、ライ麦という作物があります。黒パンの原料になる作物ですが、主な生産地はドイツ、ポーランド、ロシアなど、このあたりになります。小麦よりさらに寒さに強い、という性質から、小麦栽培エリアよりさらに北側に位置することをイメージしていきましょう。

ライ麦もさっきの図にあてはめると、小麦よりさらに下のこのへん、ということになります。

続いて、年降水量500mmを下回る場所では、さすがに雨が少なすぎて農業は困難です。こうした地域では、植物ではなく家畜を育てる牧畜が主に行われます。あと育つのは、ナツメヤシ、別名デーツという乾燥に超強い植物くらいです。乾燥地域ではこのデーツが主食になっているのですが、生産量ランキングではエジプト、サウジアラビア、イランなど、西アジアの乾燥地域ばかりであることが分かります。

一方で、年降水量2000mm以上のかなり雨の多くて気温が高い地域では、天然ゴム、油やし、カカオ、コーヒーなどの熱帯作物と呼ばれる作物が栽培に向いています。

例えばコーヒーは、気温が高くて雨が多いという条件に合うのは緯度の低い熱帯地方になるので、コーヒーの栽培地域はコーヒーベルトと呼ばれるこの緯度の内側に集中しています。天然ゴムや油やしは、タイ、マレーシア、インドネシアなどさらに高温多湿の場所に限定されます。

こんな風に、農業の勉強をするときには、どこで何を作っているかを丸暗記するのではなくて、どうしてそこで栽培が盛んなのかを、その農作物の性質と結びつけて考えていけるといいですね。

以上が、農業における自然条件のイメージです。

とは言え、現実世界で自然環境が同じ場所なら同じものを作っているかと言えば、もちろんそんなことはありません。自然環境のベースに、地域による違いを生み出しているのが、農業のもう一つの条件、社会条件だと考えてください。

社会条件というのは色々あるのですが、例えば技術の進歩。

そのままでは雨が少なすぎて農業ができない場所でも、人工的に水を引いてくる灌漑を行うことで農業が可能になった地域もあります。一例が、こちらの写真のようなセンター・ピボットと呼ばれる灌漑方法です。

地下水を汲み上げて、その水を、タイヤのついた何百メートルもある長いアームで丸くぐるっとまいていきます。実物を空から見てみましょう。Google Earthでサウジアラビアに飛んでいくと、砂漠の真ん中に、何やら緑色のポツポツが見えます。近づいて見てみると、ポツポツの一つ一つが、円形の農場であることが分かります。センターピボットで灌漑すると、こうした円形の農場が出来上がります。空からみると小さく見えますが、一つ一つの円が半径400mくらいある巨大な畑です。貴重な地下水がなくなってしまう、というデメリットはあるのですが、「技術の進歩」という社会条件によって、乾燥という自然条件を克服した例と言えるでしょう。

他にも、新しい品種が開発されることで、今まで育たなかった寒い地域でも作物が育てられるようになった、なんていうのも、技術の進歩です。

続いての社会条件は、市場までの距離。

市場というのは商品を買ってくれる人がいる大都市のことだと考えてください。

大都市に近い場所では土地が狭くて高いため、ビニールハウスを作ったりして、鮮度が大事で単価の高い野菜など、設備にお金をかけてもいいから、狭い土地で高く売れるものを作る傾向があります。こういうタイプの農業を、園芸農業と言います。

逆に、都市から離れた場所では、安くて広い土地を生かして家畜を飼う牧畜などが発達する傾向があります。

とは言え、今では野菜であっても、北海道から九州まで日本中のものがスーパーに並んでいますし、海外のものもありますよね。これは自動車や飛行機などが発達したために、遠い場所からでも鮮度を落とさず輸送できるようになったためですが、こうした「交通の発達」も社会条件の一つと言えます。

その他の社会条件としては、食文化、農業政策、歴史的経緯などがあります。

例えば、イスラム教の人は豚肉を絶対に食べないという食文化がありますので、自然条件が適していたとしても、豚は飼育されません。

特定の作物を作ると補助金を出すよ、という農業政策によって作りすぎになっている農作物もあれば、アフリカのように、植民地時代にカカオなど特定の作物を作ることを強制された、という歴史が今に影響を与えているケースなんかもあります。

この自然条件と社会条件という考え方は農業分野全体に応用できるものなので、例えば統計データを見たときに、ある作物が特定の国で生産が多いのは、一体どんな自然条件や社会条件が影響しているんだろう、って推測してみてください。農業の勉強がすごく論理的で楽しくなると思います。

動画の後半は、農作物の起源について。

世界には何百種類もの農作物がありますが、それぞれの農作物というのは初めから世界中にあったわけではなく、最初に栽培が始まった場所があって、そこから人の手で持ち出されて、世界中に広がっていったんですね。

そして、ある農産物の原産地となっている地域では、ほとんど例外なく、その農作物がその地域の伝統料理になっています。代表的ないくつかの農産物の起源を見ていきましょう。

まずコメは中国南部、小麦は中央アジアが原産地と考えられています。
今でもご飯やパンが主食の地域と重なるので、イメージしやすいかなと思います。

大豆は日本が原産地の数少ない農産物なのですが、日本から中国北部が起源と考えられています。豆腐の味噌汁を飲んで納豆に醤油をかけるとか、結局食べてるもの全部大豆ですが、それだけ大豆は日本の食文化に深く関わっているということでしょう。

トウモロコシは、メキシコやボリビアなど中南米が原産地です。メキシコではトルティーヤというトウモロコシの粉から作った薄いパンのようなものが主食になっています。

ジャガイモは、アンデス山脈が原産地です。アンデス地方のマーケットではこんな風に何種類ものジャガイモが売られていますが、標高が高い場所でも育つ貴重な作物がジャガイモだったんですね。

最後はコーヒーです。現在の生産量一位はブラジルですが、コーヒーの原産地はアフリカのエチオピアという国です。どっちもAw気候なので、自然条件は似ていますね。エチオピアでは今でもコーヒー・セレモニーという伝統的な儀式があって、冠婚葬祭などの重要な場面でコーヒーをいれています。日本の茶道に近いものがかもしれません。

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